指導教育責任者の役割と選任|営業所ごとの実務
警備業法第22条で求められる指導教育責任者について、営業所ごと・警備業務の区分ごとの選任の考え方、日常の役割、退職や異動で欠員が出たときの備え、負担を偏らせない体制づくりを整理します。
この記事のポイント
- 指導教育責任者は営業所ごと・警備業務の区分ごとに選任する必要がある
- 役割は教育の実施だけでなく、指導計画の作成と指導の記録など警備員の指導全体に及ぶ
- 退職や異動による欠員に備えて、資格者の配置状況を一覧で把握し後任候補を育てておく
指導教育責任者は、警備員の教育と指導の中心となる存在です。一方で、営業所の規模が小さい会社では、指導教育責任者が管制業務や現場の応援まで兼ねていることも多く、「誰が、どの営業所の、どの区分の責任者なのか」が曖昧になっているケースも見られます。
この記事では、経営者や営業所の責任者の方に向けて、指導教育責任者の選任の考え方、日常の役割、欠員への備えを整理します。選任の要件や届出、兼任の可否などは法令や所轄の運用によって細かく定められています。実際の運用にあたっては、最新の法令や所轄の警察署・公安委員会の運用をご確認ください。
指導教育責任者とは
指導教育責任者は、警備員の指導と教育に関する計画を作成し、その計画に基づいて警備員を指導・教育する役割を担う人です。警備業法第22条で、警備業者は営業所ごとに、警備業務の区分ごとに、指導教育責任者を選任することが求められています。
指導教育責任者になるには、公安委員会が交付する指導教育責任者資格者証が必要です。資格者証は、所定の講習を修了するなどの要件を満たすことで交付されます。
ここで押さえておきたいのは、次の2つの「ごと」です。
- 営業所ごと: 本社と支店、複数の営業所がある場合、それぞれに選任が必要
- 警備業務の区分ごと: 施設警備、交通誘導警備・雑踏警備、輸送警備、身辺警備などの区分に応じて選任が必要
新しい営業所を開設するときや、新しい区分の業務を始めるときには、指導教育責任者の手配を事前に考えておく必要があります。
指導教育責任者の主な役割
指導教育責任者の役割は、教育の講師をすることだけではありません。一般的には、次のような業務を担います。
| 役割 | 具体的な業務 |
|---|---|
| 計画をつくる | 警備員の指導に関する計画書の作成、教育計画の作成 |
| 教育を行う | 新任教育・現任教育の実施、講師の手配 |
| 指導を行う | 現場での指導、警備員の業務状況の確認 |
| 記録を残す | 教育実施簿、指導の実施状況の記録 |
| 改善する | 事故や苦情を踏まえた教育内容の見直し |
特に見落とされやすいのが「指導」の部分です。教室での教育だけでなく、現場で警備員が正しく業務を行っているかを確認し、必要に応じて指導することも役割に含まれます。指導の計画と実施の記録を残しておくことも大切です。
営業所ごとの選任で気をつけたいこと
選任状況を一覧で把握する
営業所や業務区分が増えると、「どの営業所の、どの区分に、誰を選任しているか」が把握しにくくなります。次のような一覧を作っておくと、欠員や選任漏れにすぐ気づけます。
- 営業所名
- 警備業務の区分
- 選任している指導教育責任者の氏名
- 資格者証の区分と番号
- 選任した日
兼任には注意する
一人の指導教育責任者が複数の営業所や区分を兼ねることについては、制約があります。兼任が認められる条件は細かく定められていますので、規模の小さい会社ほど、事前に所轄の警察署に確認しておくと安心です。
名目だけの選任にしない
選任されていても、実際には教育や指導にほとんど関わっていない、という状態は避けるべきです。立入検査では、指導教育責任者が実際に計画を作り、教育や指導を行っているかが記録から確認されることがあります。
現場での指導を形にする
指導教育責任者の「指導」は、教室の外、つまり現場で行われるものが中心です。とはいえ、指導教育責任者がすべての現場を回るのは現実的ではありません。現場での指導を無理なく続けるには、次のような工夫が考えられます。
- 重点的に回る現場を決める: 新人が多い現場、苦情や事故があった現場、新しく始まった現場を優先する
- 隊長と役割を分ける: 日々の声かけや基本動作の確認は隊長に任せ、指導教育責任者は定期的に状況を確認する
- 確認する項目を決めておく: 服装、立ち位置、合図の出し方、連絡の手順など、現場で見るポイントを一覧にしておく
- その場で記録する: 現場で気づいたことや指導した内容を、その日のうちに記録に残す
指導の記録は、後から読んで「いつ、どの現場で、誰に、何を指導したか」がわかるように残しておきます。記録が溜まってくると、同じ指摘が繰り返されている項目が見えてきて、現任教育で取り上げるべき題材を選ぶ手がかりにもなります。
欠員に備える
指導教育責任者が退職したり、別の営業所に異動したりすると、その営業所・区分で選任が欠けてしまいます。欠員が生じた場合の対応や期限などは定められていますが、何より大切なのは、欠員が生じる前に備えておくことです。
- 資格者を複数育てる: 資格者証を持つ人を営業所に一人しかいない状態にせず、後任候補に講習を受けてもらう
- 異動の前に確認する: 人事異動を決める際、指導教育責任者の選任状況に影響しないかを確認する
- 退職の兆しを早めに把握する: 定年が近い、体調に不安があるといった場合は、早めに引き継ぎを始める
資格の取得には講習の受講が必要で、講習の日程も限られています。欠員が出てから慌てて手配しても間に合わないことがあるため、中長期の人員計画のなかで考えておきましょう。
負担を偏らせない体制づくり
指導教育責任者は、教育・指導・記録と業務が多く、管制や現場の応援まで兼ねていると、どうしても記録が後回しになります。負担を減らすためには、次のような工夫が考えられます。
- 教育の講師の一部を、経験のある隊長クラスの警備員に任せる
- 教育の記録や時間の集計を、事務担当者やシステムに任せる
- 指導計画の様式を統一し、毎回ゼロから作らなくて済むようにする
指導教育責任者が本来の役割である「計画と指導」に時間を使えるようにすることが、教育の質を高めることにつながります。教育記録の具体的な残し方は警備員教育の記録、どこまで残せば十分かを、毎年の教育の進め方は現任教育は年度ごとに10時間をご覧ください。
よくある質問
指導教育責任者は営業所に常駐している必要がありますか
指導教育責任者は営業所ごとに選任するものであり、その営業所の警備員の教育と指導を担う立場です。常駐の考え方や兼任の可否については細かな定めがありますので、最新の法令や所轄の警察署・公安委員会の運用をご確認ください。
指導教育責任者が退職した場合はどうすればよいですか
速やかに後任を選任する必要があります。後任に資格者証がない場合は講習の受講が必要になるため、日頃から後任候補を育てておくことが大切です。手続きや期限については所轄の警察署に確認してください。
経営者自身が指導教育責任者を兼ねてもよいですか
資格者証を持っていれば、経営者が指導教育責任者を務めることもあります。ただし、経営の業務と教育・指導の業務を両立できるかは、会社の規模や体制によります。名目だけの選任にならないよう、実際に教育と指導に関われる体制を考えましょう。
まとめ
指導教育責任者は、営業所ごと・警備業務の区分ごとに選任する必要があります。役割は教育の実施だけでなく、指導の計画作成や現場での指導、記録の作成まで幅広く及びます。退職や異動による欠員に備えて、資格者の配置状況を一覧で把握し、後任候補を育てておきましょう。
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