警備業法第19条の契約前書面・契約後書面|交付のタイミングと記載
警備業法第19条で求められる契約締結前・締結後の書面交付について、交付のタイミング、記載内容の考え方、継続契約や内容変更のときの扱い、営業と事務の連携で漏れを防ぐ方法を実務の目線で整理します。
この記事のポイント
- 警備業務の契約では締結前と締結後の2つのタイミングで書面を交付する必要がある
- 記載する内容は法令で定められているため、自社の様式を定期的に最新の要件と照らし合わせる
- 見積もりから契約・配置までの流れのなかに書面交付の手順を組み込むと漏れを防げる
警備業務の契約では、契約を結ぶ前と結んだ後に、それぞれ書面を依頼者に交付することが求められています。ところが実務では、長年の取引先との契約更新や、急ぎの依頼への対応のなかで、書面の交付が後回しになったり、控えが残っていなかったりすることがあります。
この記事では、経営者や営業担当者、事務担当者の方に向けて、契約前書面・契約後書面の役割、交付のタイミング、記載内容の考え方、漏れを防ぐ仕組みを整理します。記載事項や交付の方法などの細かな要件は法令で定められており、改正されることもあります。実際の運用にあたっては、最新の法令や所轄の警察署・公安委員会の運用をご確認ください。
2つの書面が求められる理由
警備業法第19条では、警備業者が警備業務の契約を締結しようとするとき、その契約を締結するまでに、契約の概要などを記載した書面を依頼者に交付することが求められています。また、契約を締結したときには、遅滞なく、契約の内容を明らかにする書面を交付することが求められています。
2つの書面には、それぞれ次のような役割があります。
| 書面 | 交付のタイミング | 主な役割 |
|---|---|---|
| 契約前書面 | 契約を締結するまで | 依頼者が契約内容を理解したうえで判断できるようにする |
| 契約後書面 | 契約を締結したとき(遅滞なく) | 合意した内容を明確にし、後のトラブルを防ぐ |
警備業務は、依頼者にとって内容や範囲がわかりにくいサービスです。「どこまでが警備員の仕事なのか」「事故が起きたらどうなるのか」を事前に書面で示しておくことは、依頼者を守るだけでなく、警備会社自身を守ることにもつながります。
記載内容の考え方
記載すべき事項は法令で定められています。ここでは細かな項目の列挙ではなく、どのような種類の情報を書くのかを整理します。
- 業務の内容: どの区分の警備業務を、どこで、どのように行うのか
- 期間と時間: 契約の期間、警備を行う日や時間帯
- 料金: 警備料金の額、支払いの方法や時期
- 人員: 配置する警備員の人数や、必要な資格
- 責任の範囲: 損害が生じた場合の取り扱い
- 契約の変更・解除: 内容を変更する場合や、契約を終える場合の取り決め
自社で使っている書面の様式が、何年も前に作ったものであれば、現在の要件をすべて満たしているか確認しておきましょう。営業所ごとに独自の様式を使っている場合は、会社として様式を統一しておくと、内容のばらつきを防げます。
実務でつまずきやすい場面
急ぎの依頼
「明日から来てほしい」という急な依頼では、口頭やメールのやり取りだけで警備が始まってしまうことがあります。急ぎの場合でも、契約前に書面を交付する手順は省略できません。急ぎの依頼に備えて、すぐに出せる書面のひな形を用意しておくことが大切です。
継続している取引先
長年取引のある顧客との契約では、最初の契約時にだけ書面を交付し、その後の更新や内容の変更で書面が作られていないことがあります。契約内容が変わった場合の書面の扱いは、法令や運用を確認のうえ、社内ルールとして決めておきましょう。
元請・下請の関係
建設工事の現場などでは、発注者、元請の建設会社、警備会社といった関係者が複数います。誰と契約を結んでいるのか、書面を誰に交付するのかを、案件ごとに明確にしておく必要があります。
書面を「説明の道具」として使う
書面の交付は、法令で求められているから行う手続きという面だけではありません。契約の内容を顧客と一緒に確認するための「説明の道具」として使うと、後のトラブルを大きく減らせます。
警備の現場では、「警備員に資材の運搬を手伝ってほしい」「予定の時間を過ぎても残ってほしい」など、契約の範囲を超える依頼が現場で出てくることがあります。こうしたとき、契約前の段階で業務の範囲や時間外の扱いを書面で説明していれば、現場の警備員も「契約の範囲外です」と説明しやすくなりますし、営業担当者も追加の契約として相談しやすくなります。
書面を渡すときには、特に誤解が生まれやすい次のような点を口頭でも補足しておくとよいでしょう。
- 警備員が行う業務と、行わない業務の境目
- 予定の時間を超えた場合や、急に中止になった場合の料金の扱い
- 事故や損害が起きた場合の連絡と対応の流れ
控えの保管と検査への備え
書面を交付したら、その控えを保管しておきます。立入検査では、契約に関する書面が適切に交付されているかを確認されることがあります。
- 交付した書面の控えを、顧客ごと・契約ごとに整理して保管する
- 交付した日付と、交付した方法(手渡し・郵送など)を記録しておく
- 契約内容を変更した場合の書面も、元の契約と紐づけて保管する
紙で保管していると、営業担当者の手元に控えが残ったままになり、事務所で探しても見つからない、ということが起きがちです。顧客・現場の情報と書面を一か所で管理しておくと、検査のときにも慌てずに済みます。検査前の準備については立入検査で慌てないための法定帳簿チェックリストもご覧ください。
漏れを防ぐ業務の流れ
書面の交付漏れは、担当者の注意だけで防ぐのは難しいものです。見積もりから配置までの業務の流れのなかに、書面の交付を組み込んでおくことが効果的です。
- 見積もりを提出する
- 依頼が決まったら、契約前書面を作成して交付する
- 契約を締結したら、契約後書面を作成して交付する
- 書面の交付が確認できてから、現場を登録し配置を組む
「書面の交付が確認できるまで配置を確定しない」というルールを決めておくと、営業と管制の間で自然に確認が行われるようになります。
あわせて、書面の作成を誰が担当するのかも決めておきましょう。営業担当者が作るのか、事務担当者が作るのかが曖昧だと、お互いに「相手が作ったはず」と思い込んで漏れが生まれます。契約の件数が多い会社では、月に一度、新しく始まった現場の一覧と、書面の控えの一覧を突き合わせる確認も効果的です。
よくある質問
契約前書面と契約後書面を1枚にまとめてもよいですか
2つの書面は交付のタイミングと役割が異なります。まとめ方については細かな取り扱いがありますので、自社の様式を作る際には、最新の法令や所轄の警察署・公安委員会の運用をご確認ください。
短期間の単発の警備でも書面の交付は必要ですか
契約の期間の長さにかかわらず、警備業務の契約であれば書面の交付が求められると考えておくのが安全です。単発の依頼に備えて、短時間で作成できるひな形を用意しておきましょう。
書面は電子データで交付できますか
電子的な方法による交付については、依頼者の承諾などの条件が定められています。導入を検討する場合は、最新の法令や所轄の警察署・公安委員会の運用を確認したうえで進めてください。
まとめ
警備業務の契約では、締結前と締結後の2つのタイミングで書面を交付する必要があります。記載する内容は法令で定められているため、自社の様式を定期的に最新の要件と照らし合わせましょう。見積もりから契約・配置までの流れのなかに書面交付の手順を組み込んでおくと、急ぎの依頼や継続契約でも漏れを防げます。
警備サインでは、契約前書面・契約後書面を PDF で出力できます。現場の登録や配置と同じシステムで書面を扱えるため、交付の確認や検査時の提示もスムーズになります。詳しくは機能紹介をご覧いただくか、資料請求・お問い合わせからご相談ください。
