苦情処理の記録の付け方|受付から解決まで
警備業法第20条で求められる苦情の適切な解決について、苦情を受け付けてから解決するまでの流れ、記録に残したい項目、社内での共有と再発防止、記録を教育に活かす方法を実務の目線で整理します。
この記事のポイント
- 警備業者には苦情の適切な解決に努めることが求められており、受付から解決までの記録が対応の証拠になる
- 記録には受付日時・申し出の内容・事実確認・対応・結果を時系列で残す
- 苦情を個人の失敗で終わらせず、現任教育や配置の見直しにつなげることが再発防止になる
警備の現場では、顧客や近隣の方、通行人などから苦情を受けることがあります。「警備員の言葉づかいが乱暴だった」「誘導が分かりにくかった」「持ち場を離れていた」。こうした申し出にどう対応し、どう記録に残すかは、会社の信頼に直結します。
この記事では、営業所の責任者や管制担当者、事務担当者の方に向けて、苦情を受け付けてから解決するまでの流れと、記録の付け方、再発防止への活かし方を整理します。苦情の記録や備え付けに関する要件は法令で定められており、改正されることもあります。実際の運用にあたっては、最新の法令や所轄の警察署・公安委員会の運用をご確認ください。
苦情対応が求められる理由
警備業法第20条では、警備業者は、依頼者などからの苦情の適切な解決に努めなければならないとされています。また、苦情の内容や対応の状況を記録しておくことは、立入検査で対応の状況を説明するための根拠にもなります。
苦情への対応は、単なるクレーム処理ではありません。苦情の中には、現場の安全に関わる問題や、教育の不足を示すサインが含まれていることがあります。きちんと記録し、分析することで、事故の予防や教育の改善につなげることができます。
受付から解決までの流れ
苦情への対応は、次のような流れで進めると整理しやすくなります。
- 受付: 申し出を受け、内容を聞き取る
- 一次対応: お詫びが必要な場合は誠実に対応し、確認して回答することを伝える
- 事実確認: 当日配置されていた警備員や隊長、管制担当者から事情を聞く
- 対応の決定: 謝罪、配置の変更、警備員への指導など、対応を決める
- 回答: 申し出た方に対応の内容を伝える
- 再発防止: 原因を分析し、教育や配置のルールを見直す
受付で大切なこと
苦情は、営業担当者、管制担当者、現場の警備員など、さまざまな窓口に届きます。どこで受け付けても同じように記録されるよう、受付時に聞き取る項目を決めておくことが大切です。
- 申し出た方の氏名と連絡先(匿名の場合はその旨)
- 日時と場所(現場名)
- 申し出の具体的な内容
- 申し出た方が求めていること
受付の段階では、事実かどうかを判断せず、申し出の内容をそのまま記録します。
事実確認で大切なこと
当日の配置の記録や勤務の記録を確認し、誰がその場にいたのかを特定します。関係した警備員から話を聞く際は、責める姿勢ではなく、何があったのかを丁寧に確認することが大切です。警備員側にも事情があることが少なくありません。
記録に残したい項目
苦情の記録は、後から第三者が読んでも経緯がわかるように、時系列で残しておきます。一般的には、次のような項目を記録しておくとよいでしょう。
| 項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 受付 | 受付日時、受付者、受付の方法(電話・来訪・メールなど) |
| 申し出の内容 | 申し出た方、日時・場所、具体的な内容 |
| 事実確認 | 関係した警備員、確認した内容、確認した日 |
| 対応 | 謝罪・指導・配置変更などの対応、対応した者 |
| 結果 | 申し出た方への回答の内容と日付、解決したかどうか |
| 再発防止 | 原因の分析、教育や運用の見直しの内容 |
記録の様式や記載事項は法令で定められている部分もありますので、自社の様式が要件を満たしているか確認しておきましょう。
回答するときの注意点
事実確認と対応の決定が済んだら、申し出た方に回答します。回答の仕方によって、苦情が解決に向かうか、かえってこじれるかが分かれます。
- できるだけ早く連絡する: 確認に時間がかかる場合は、途中経過だけでも伝える
- 事実と対応を分けて伝える: 確認できた事実と、会社として行う対応を整理して伝える
- 警備員個人を責める言い方をしない: 会社としての責任で対応する姿勢を示す
- 約束したことを守る: 「配置を替えます」「指導します」と伝えたことは、必ず実行して記録する
回答した内容は、記録に残しておきます。特に、申し出た方に約束した対応は、後から実行したかどうかを確認できるようにしておくことが大切です。顧客からの申し出であれば、担当の営業担当者にも内容を共有し、次の打ち合わせなどで改めてお礼やお詫びを伝えられるようにしておくと、信頼の回復につながります。
記録を分散させない
苦情の記録でよくある問題は、記録が分散してしまうことです。営業担当者の手帳、管制担当者のメモ、メールのやり取りなど、情報がばらばらに残っていると、後から経緯を追うことができません。
- 苦情の記録は一か所にまとめる
- 受付者が誰であっても、同じ様式で記録する
- 対応が終わるまで「未解決」として管理し、放置されないようにする
- 同じ現場や同じ警備員に関する苦情を後から検索できるようにする
未解決の苦情が放置されると、申し出た方の不満が大きくなり、取引の継続にも影響します。定期的に未解決の案件を確認する時間を設けましょう。
苦情を教育と配置の改善に活かす
苦情を「その警備員の失敗」として個別に指導するだけで終わらせると、同じような苦情が別の現場で繰り返されます。苦情の記録を定期的に振り返り、傾向を分析することが大切です。
- 言葉づかいや態度に関する苦情が多い: 現任教育で接遇やコミュニケーションを取り上げる
- 誘導の方法に関する苦情が多い: 業務別の実技教育を見直す
- 特定の現場に苦情が集中している: 現場の条件や配置人数、配置する隊員の組み合わせを見直す
- 経験の浅い隊員に関する苦情が多い: 新任教育の内容や、経験者との組み合わせを見直す
苦情の傾向を現任教育の題材にすると、受講者にとっても身近で実践的な内容になります。現任教育の計画については警備員の現任教育は年度ごとに10時間もご覧ください。
よくある質問
匿名の苦情も記録する必要がありますか
匿名であっても、現場で何かが起きていた可能性があります。申し出の内容を記録し、可能な範囲で事実確認を行っておくことをおすすめします。
苦情の記録はどのくらいの期間保存すればよいですか
保存の期間については法令の定めや所轄の運用がありますので、最新の法令や所轄の警察署・公安委員会の運用をご確認ください。再発防止の分析に使うためにも、一定期間はさかのぼって確認できるようにしておくと役立ちます。
警備員に非がなかった場合も記録は必要ですか
必要です。事実確認の結果、警備員に非がなかった場合でも、申し出があったこと、確認した内容、回答した内容を記録しておくことで、後から同じ申し出があった場合にも経緯を説明できます。
まとめ
警備業者には苦情の適切な解決に努めることが求められており、受付から解決までの記録が、誠実に対応したことの証拠になります。記録には受付日時・申し出の内容・事実確認・対応・結果を時系列で残し、一か所にまとめて管理しましょう。そして苦情を個人の失敗で終わらせず、現任教育や配置の見直しにつなげることが、再発防止の近道です。
警備サインでは、配置表や勤怠の記録を同じシステムで管理できるため、苦情の申し出があったときに、当日誰がどの現場に入っていたかをすぐに確認できます。教育計画や教育実施簿とあわせて使えば、苦情の傾向を教育に反映する流れもつくりやすくなります。詳しくは機能紹介をご覧いただくか、資料請求・お問い合わせからご相談ください。
